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延世大学 冬季短期留学

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  • 概要
     2017年2月1日〜2月22日の約3週間、延世大学に短期留学をしてきました。以下その体験報告です。参加したプログラムは3週間完成の言語研修です。http://www.yskli.com/_en/proc/p5.asp

  • 目的
     東京外国語大学で韓国語を専攻しており、3年間の履修を修了したタイミングで、一度韓国にまとまった期間滞在し、自分の学習の到達度を図ってみようと思い、留学を決意しました。また、夏から始まる英国留学でも、留学先であるマンチェスター大学で East Asian Studies という学部にの授業を履修するため、ソウルでのフィールドワークは必要不可欠でした。

  • 学費・諸経費
    申請料+授業料 105,200円
    教科書 約2000円
    往復航空券 27,580円
    宿泊費(ゲストハウス)44,388円
    生活費 約50,000円 〜

  • 学校生活について

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 写真は延世大学のキャンパス内です。図書館は語学堂の学生も学生証を持っていけば利用できます。

 授業開始の前日にレベル分けテストが実施されます。試験は筆記と口頭の2種類で、同時進行で行われます。筆記試験の教室から一人ずつ隣の教室に呼ばれ、そこで口頭試験が終われば筆記試験の教室に戻り、解き終わった人から解散、というシステムです。筆記試験はおよそ10ページほどで構成されており、進むにつれて難易度が上がっていきます。絵を見て答えるような初級問題から始まり、文法、穴埋め問題、最後のページには複数の選択肢の中から好きなテーマを選んでそれに対する賛成または反対の立場を明確にした上で自分の意見を述べる形式の作文問題があります。しかし、これはあくまでレベル分けテストですので、試験前の説明でも、わからない問題まで解く必要はないと言われます。翌日の朝に投稿するとロビーに結果が掲示されており、自分の名前を探して記載された教室に移動します。教科書は授業料に含まれていません。館内の売店で購入します。1日の授業は9:00〜13:00でリーディング・ライティングの授業とリスニング・スピーキングの授業の2つで構成されています。それぞれの授業は2時間ずつ、途中に10分休憩があり、授業と授業の間に20分休憩があります。今回の冬季プログラムは1級から7級で構成されており、7級のクラスに入ることができました。4技能全てが上級韓国語に当たり、ニュアンスのよく似た表現の使い分けがメインでした。より自然な表現を用いることができるようになることがクラスの目標だったようです。教科書は3週プログラムのために作成された延世大学出版のもので、カリキュラムがスケジュールに沿っていてよかったです。

 リーディング・ライティングの授業では文法一つを習うごとに先生が生徒を一人ずつ指名し、その文法表現を用いた例文を実際に話させるスタイルで、全員が均等に授業に参加できるようよく配慮されていたように思います。ただ難しくなるにつれて先生の説明の占める割合が多くなり、ほぼ講義の形態になることもしばしばありました。スピーキングを重点的に鍛えたいと思って入学したクラスメイトがやや不満を抱いていたのですが、その所以はそこにあるように思います。ただわたし個人の感想としては、違いのわからなかった二対の文法や、いつ使えばよいのかが不明瞭だった表現などがきちんと整理されたため有意義な授業だったように思います。教科書にまとめられたものは日常生活でもよく耳にするものが多く、習ったことがその日のうちに活きることもありました。3週間という短い期間で構成されているため、ペースはやや早めでしたので、全て初めて見る表現だった場合かなりハードに感じられるかもしれません。基本的に課題は課されませんが、その日のテーマに沿った文章を書いて提出すれば次の日までに添削して返してもらえます。わたしの場合は自分の大学でも可能ですが、母語話者にチェックしてもらうというのは何度経験しても意義があります。

 スピーキングの授業では、プログラムの中間発表として新聞記事発表、終盤に討論会があります。新聞記事発表は自分の気になる記事を持ち寄り、その本文中に使用されている語彙を整理した上で要約とその記事に対する自分の意見、みんなで話し合いたい点をまとめてプリントアウトし、提出します。それを当日全員分コピーして配布し、前に出て発表します。授業内容に比べて求められるスキルが高すぎるようにも感じましたが、かなり早い時点に告知があり、準備する時間は十分に与えられているので不可能ではありません。この発表がスピーキングの最終評価100点のうち20点を占めます。討論会は先生の提示する複数のテーマの中から1つを全員で話し合って選び、学生を賛成と反対の2チームに分けてその案件についてしっかりと調べさせ、当日討論をするという内容でした。わたしたちは「少年犯罪に対する処罰の是非について」で非常に難解でした。クラスには日本、台湾、シンガポールの学生がいたため、それぞれの国の少年法や実際にあった少年犯罪について調べました。必ずしも相手を論破する必要はありませんでしたが、これも20点満点で評価に含まれます。

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 最終日に4技能全ての到達度を確認する試験が行われます。リーディング・ライティング・リスニングは筆記試験でのみ評価されますが、スピーキングは新聞記事発表と討論会の点数を差し引いた60点満点です。これは初日の試験と違って、3週間のうちに習ったものを確認する試験であるため、級によって試験内容が変わります。修了式の日に写真のような紙が渡され、成績照会が可能です。事前に登録していればネット上でも確認できます。修了式まで待つ間に簡単に問題の解説とスピーキングの試験のフィードバックを聞くことができます。わたしは簡単な表現で説明する癖がついているために一文が長くなったり、より適切な表現があっても容易な単語で済ませてしまう傾向がある点を指摘されました。「初対面の人と会話することは出来ても、そこから仲良くなるまでに時間がかかる」を「人見知りをする」といったように一語にまとめたり「そういう人が多い」を「傾向がある」に、「そうする方が良い」ではなく「賢明である」を用いるなど、より難易度の高い語彙を使って話す練習をすれば公的な場所で話すときに活きるのでは、とのことでした。非常に納得の行く指摘でありがたかったです。

  • 放課後・休日について  授業が13:00に終わるため、放課後はまず新村駅付近で昼食を取り、その後はカフェで勉強したり、友人と連絡を取って一緒に食事をしたりして過ごしました。また、わたしの提出した留学計画に沿って、博物館を訪問したりもしました。渡韓前からソウル歴史博物館は必ず訪れるつもりでいましたが、語学堂の先生に国立中央博物館にも行くべきだと教えていただいたため、そちらも合わせて行ってきました。

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 国立中央博物は新龍山駅の近くにあります。1階が朝鮮半島の通史、2階が朝鮮半島の芸術、3階がアジアの地域別展示で構成されています。日本語の音声案内を貸し出していますが、不正確な文章が多く、聞き取りづらいので、途中から使用を諦めて韓国語の説明と英訳を照らし合わせながら理解しました。朝鮮史は石器時代から大韓帝国時代までで、中・近世から近代に移るときの少しの躊躇が行き場を失うくらいに世界大戦に焦点が当たりません。そのままアンジュングンの肖像が現れ、気づいたらフロアの果てに立っていました。どうしてなのでしょう。通史だからなのか、国立だからなのか。ただわたしが見逃しているだけかもしれないと思い、通路を少し遡ります。その時期の新聞や独立までの道のりを示す資料、年表は確かにあるのですが、平和を訴えるための残酷な写真や映像に慣れた身にはやはり、あまりにもあっけなく感じられます。考えてみれば韓国はあくまで 「 休戦中 」で、公式に軍隊を有していて、徴兵制度も継続していて、いつ如何なる時でも応戦する準備が整っています。平和の大切さを主張することと戦争を放棄することは同義ではないのだということを痛感しました。

 ソウル歴史博物館は光化門にあります。音声案内だけでなく、無料配布の資料も正確な日本語訳があり、主要な展示には説明書きにも韓国語の横に英語と日本語が並んでいて深く理解できます。ただ全体を通して 「 ソウル市の発展 」 に焦点が当たるので、大韓帝国時代以降のゾーンも街並みの移り変わり、人々の暮らしの変化がメインでした。公的な文書とは別に、日本語と韓国語が併記された教科書やチラシ、ポスターが多数残っており、言語の統制の様子がよくわかります。日章旗の歌の歌詞カードや皇民の宣誓の小さなメモ用紙なども残っています。植民地支配とは一体何なのか、その光景の一抹を目撃した気分になりました。特に興味深かったのは当時の韓国人学生の日記です。日本語が母語でない人によって書かれたものとは到底思えないほど綺麗な字で「 友達がしばしば僕に云ふ 「 君は此頃顔色が青いな 」 と、さう言ふて下れる さう言ふて下れた御志は厚いが、僕としては好まない、むしろ此のやうな見舞言葉は其の人をして心配をさせ、気味を悪くする ... 」 と書いてあったのです。視線の集まらない低い位置に飾られた小さなノート。展示した人はちゃんとこれを読んで飾ったのでしょうか。この前後の内容を見ても、彼の関心は自身の体調不良にしか向いておらず、他人に直接言えない不満を書き連ねているだけでした。この日記を書いた彼にとって日本語とは何だったのでしょう。また、ここでも戦闘に関する写真や映像はほとんどありませんでした。さらに驚いたのは1950年の地点においても、朝鮮戦争に関する資料がほとんど展示されていないということです。そんなはずはないと思い、何度も通路を遡り探しましたが、ほんの数箇所に文章で記載されているのみで、何かを急ぐかのように、その後の都市の発展へと話が移り変わっています。まだ戦争をする可能性が十分にある国家において、戦争の悲惨さを伝えることは兵士の、強いては国民全体の士気を下げることになりかねないとでも言うのでしょうか。

 金曜日の夜には毎週いとこと合流して一緒に帰り、週末は金浦にある親戚の家で過ごしました。今回は普段はなかなか会えない韓国の家族ととゆっくり過ごすことも目的の一つだったため、ソウルと金浦を行き来する生活ができてとても幸福でした。

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  • ゲストハウスについて
     寮の部屋がすぐに埋まったため、ゲストハウスに滞在しました。明洞にある Philstay Myeong Dong Botique という女性専用の宿です。ホームページに掲載されている写真を見る限り清潔で価格も非常に良心的でしたので、迷わず予約しましたが、後から延世大学のある新村駅の隣である梨大駅にも系列の宿があることを知ったので、延世大学に通うならそちらの情報も合わせてみることをおすすめします。ただどこにいても「暮らすように過ごすこと」を理想とするわたしにとって、毎日地下鉄で学校に通ったことはとても良い思い出になりました。
     部屋は2人部屋、4人部屋、8人部屋で構成されており、わたしは最安値の8人部屋で過ごしました。ベッドサイドにランプと簡単なテーブルがあり、ベッドの枠ぴったりのブラインドがあるため、周りの様子も気になりません。24:00にはスタッフの人が各部屋の消灯に回り、共用スペースでも音を立ててはいけないルールになっているため、騒がしくて眠れないということもありませんでした。床にはオンドルが整備されているため、寒さを感じることもありませんでした。ただたまに部屋の温度が高すぎるように感じたり、換気が十分になされていない時もありました。部屋の扉を開けておくことは可能ですが、扉が開いたままになっていることを不快に思う利用者もいるため、一人の判断で換気をすることが難しいです。利用者には日本人、韓国人、中国人が多くスタッフの方も日本語、中国語、英語に対応している人がほとんどでした。女性専用なこともあり、化粧台には上等なドライヤーからティッシュやコットン、綿棒まで整備されており細やかな気遣いに感動しました。トイレやシャワー室も隅々まで清潔に手入れがされている印象を受けました。シャンプーやコンディショナーはもちろん、タオルまで自由に利用できるため、日用品にこだわる必要がなければ、かなり少ない荷物での旅が可能になります。各国のコンセントに対応する変換プラグも準備があり、チェックアウトする日まで継続して貸し出してもらえます。シャワー室は清潔な上に換気の性能がよく、人が使い終わると室内全体がすぐに乾きます。シャワー室までオンドルが届いており、利用前も利用後も寒さを感じることがなく快適でした。シャワーは4人まで同時に可能です。わたしは20:00〜23:00の間に利用していましたが、ほとんどの場合誰もおらず、1人で利用できることが多かったです。また、誰かがいたとしても最大3人で、シャワーがしたいのに場所が空いていないということはありませんでした。朝食は7:00〜10:00までで、フロントの飲食スペースに食パンとジャムやバター、牛乳、ジュース、コーヒーマシーンなどが準備され、自由に利用することができます。トースターがあるため、食パンは焼いて食べることも可能です。その他に電子レンジや冷蔵庫、お湯の出るサーバーなども完備されているため、近くのスーパーやコンビニでまとめ買いして置いておいて、必要な時に温めて食べたりすることも可能です。部屋には Wi-fi が届いていますが、少し遅くなることがありました。フロントに飛んでいる5Gの Wi-fi が強力です。

  • まとめ
     学校の寮ではなく、電車で30分ほどかかる場所から毎日通ったため「暮らすように過ごす」ことができ、とても充実した毎日を送ることができました。東アジアの外交関係や歴史問題について本格的に勉強し始めた年だったので、実際に博物館を訪問してゆっくりと考える時間を持てたこともよかったです。韓国語運用能力についても、テンポが上がったり、その日習った表現やそれまでに使ったことのなかった表現を積極的に使う練習をすることで、話し言葉の語彙の増加を実感できました。最も苦手とするライティングに関しても、教科書のテーマに関して書いた作文や課題を定期的に先生に添削してもらうことで正確性が改善されました。スピーキングに関しては授業より授業の外で伸びたように感じられますが、それも留学の醍醐味のうちと思えば概ね満足です。近いうちに TOPIK 等を受けて、達成度を数値化したいと思います。

この記事を書いた人

ellen.t
現在地:日本
東京外国語大学 言語文化学部 言語文化学科 東アジア地域専攻・朝鮮語科 国立行政法人 日韓大学生討論会 北京語言大学 短期留学 (2015/7/22 ~ 8/20) スタディツアー「フランスの移民社会について学ぶ」(2016/2/9 ~ 2/22) 北京語言大学 短期留学 (2016/7/19 ~ 8/18)

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