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4月

1.勉学の状況
 今月で一応東フィンランド大学での交換留学を終えました。
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 最後のコースとして(ⅰ)The Religious Life in Finland: Between East and Westと(ⅱ)Introduction to Finnish School Lifeのレクチャーがありました。以下に授業の詳細を書きます。

(ⅰ)The Religious Life in Finland: Between East and West
 フィンランドでの宗教と人々の生活との関係、特に東西地域間の違いに着目した授業です。レクチャーと議論の他、オーソドックス修道院と市内の教会の見学がありました。個人的に大学付属小学校での宗教教育も見に行きました。
 フィンランドの宗教の基本情報として、この国の2大宗教はプロテスタントの一派福音ルター派教会(全体約80%)とカトリックの一派正教会(1%)です。正教会に所属するたった1%のフィンランド人口を支えているのはここ東フィンランドに暮らす人々です。東フィンランドは長くロシアの領土下であり、特にカレリア地方は未だロシアと領土を分かち合っていることから、正教会は東フィンランドの多数派の宗派として11世紀から人々の生活や文化に大きく影響を与えてきました。
 この授業の一環でフィンランド国内に2つだけ存在する修道院を見学に行きました。パロッキ市にあるリントゥラ至聖3者女子修道院とヘイナヴェシ市のヴァラモ男子修道院で、どちらもカレリア地方に位置しています。
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各修道院でシスターや神父さんの話を聞き、今の時代にも残る厳しく伝統的なキリスト教の風習や行事、長い歴史、そして正教会独特の建築と美術を知りました。内装は宗教色コテコテの派手で豪華な装飾の一方で、外観はフィンランド建築特有の質素で荒廃した寂しさの差に惹かれました。壁全体を埋め尽くす見事な宗教画とアイコンの数々は聖書の内容とギリシャ史の偉人達を象徴しています。部屋の中央に立つと上下左右360℃部屋中の人物画の強い視線を感じました。基本的にはどの正教会も同じ構想になっており、正面に神父だけが中に立ち入りを許される聖壇、中央の吹き抜けの天井には神である天の父とその周りを取り囲む側面にイエスキリストや聖母マリアが描かれ、そこから垂れ下がる大きなシャンデリアには蝋燭と精霊達のアイコンが付いています。三位一体説を表現する手法でもあるそうです。リントゥラ至聖3者女子修道院の見事な壁画は日本人画家SASAKIによって描かれたということで意外な接点がありました。
 一口にキリスト教と言ってもその内容は宗派によって様々であることを改めて思いました。私の家族は皆日本基督教団プロテスタントで私自身も生まれてすぐに教会で洗礼を受け15年間日曜日の教会学校に通っていました。私個人はクリスチャンではありませんが、価値観や文化、生活習慣は無意識のうちにプロテスタントに強く影響されています。別の宗派の教会を見ることは、違いに対する新鮮な驚きと抵抗感、共通点に対する安心感と懐かしさがありました。特にプロテスタントにない文化、華やかで荘厳な装飾、アイコンの中のイエスキリストの目、数珠に似たアクセサリー、実際に叩かせてもらった鐘の響く音、アジアとヨーロッパが融合した絵画、光る金色、ギリシャ音楽を思い出す滑らかなメロディ、アイコンにキスする人々、教会の人々の全身黒に包んだ服装は、甘いお香の匂いとともに強く印象に残りました。

(ⅱ)Introduction to Finnish School Life
 フィンランドの学校生活がテーマの授業で、学校教育についてのレクチャーの他に東フィランド大学付属小学校の25時間分の授業と6回分の休み時間、5回分の朝礼と学校行事の見学が義務づけられています。各々担当のクラスが振り分けられ、私は1,3,5年生の各A組を中心に見学しました。基本的に全科目を見ることになっていましたが、私は特に美術と図工、テキスタイル(布)のクラスを中心に回りました。
 この授業は9カ国からの留学生15人で成り立っており、授業の一環で小学校の全校朝会で各国のイースターについてそれぞれの国の言葉で発表する課題がありました。私は浴衣を着てイースターと同じ時期の雛祭りについて日本語で話し「楽しい雛祭り」をアカペラで歌いました、もう一生やらないでしょう。
 高学年のクラスにいると、子供達がはにかみつつ誠実な清潔感ある英語で話しかけてくれ非常に愛らしかったです。その一方で、クラスによっては先生方の見ていない所でのいじめを定期的に目撃したり、私も中国人として子供達から笑いのネタにされたりし、学校の普遍的な側面を見られて良い経験になりました。
 学校行事として、小学生から高校生による音楽コンサートや中学生による眠れる森の美女の劇、高校3年生による卒業ダンスを見に行きました。どれも私の知る学校独特の緊張感や「やらせ」感、子供の意欲や自発性に目立った差がなく、リラックスした雰囲気の中で自由で伸びやか、ユーモアのある表現をしていて心打たれました。

2.生活の状況
 今月上旬はまた2週間ほどイースター休みがありました。何をしていたのか記憶がありません。休日最終日は、お友達がヨエンスーから30km離れた森の中のお家に招待してくれ、旦那さんが捕獲したヘラジカを使ったシチューや鮭パスタ等他御馳走をいただきました。初めてフィンランドのイースターのお菓子マンミとパシャを食べました。外国人は好みが別れるそうですが、私には全て美味しく毎日食べたいくらいでした。どの国に行っても地元の料理を美味しく食べられる便利な舌を持ちラッキーです。

 下旬はヘルシンキへの引っ越しの準備や友人との別れで慌ただしく日々が飛んでいきました。最後まで雪が降り天候にうんざりしました。
 心を開いていること、誰に対してもです。最終的には大学院の留学生とロシア人を中心に愛すべき良い友達が増えてラッキーでした。特に最後の週はパーティーにたくさん誘ってもらい"永遠の別れ"の言葉ばかり交わすのでその度に少しずつ老いました。友人達から「アカリはアカリ独特のクールな世界に生きている、超人気者で誰よりも顔が広い、賢くユニークで常に運が味方…」のような当然分かりきったことを言われ、分かりきっているはずなのに泣きました。

 ヨエンスーのアリーナで3日間にわたって大規模な科学フェスティバルが開かれ、植物、ロボット、車、画像処理等50以上の理系分野のワークショップがありました。好奇心満ちた子供達で常に溢れ返り私も昆虫ブースに飛びつきました。フィンランドの伝統的な音楽とダンス、ロックコンサートもあり、文化的な良いイベントでした。
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 その他は、国際ディナー企画で初めてカレリア大学へ行ったり、友達とサイクリングした夕方に橋から見下ろした河の雄大さ、近所の森と湖を散歩し深夜インド映画を観たり、ベトナム人コミュニティのパーティーで春巻と米麺を箸ですすりノスタルジー溢れたり(アジアよ!)、モルモン教会とお関わりになったり、市内の美術館とギャラリーで新しい企画展が始まったので見に行ったり、選挙の広告のデザインに感嘆したり、社会福祉系NGOの日本文化イベントで女の子達と折り紙と漫画作成で遊んだりしました。
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この記事を書いた人

Akari Yamasakiさんの海外ストーリー