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ATCAリモート観測

 今週はシドニーのエッピングにあるCSIRO/ATNF (Australia Telescope National Facility/オーストラリア国立望遠鏡機構)でリモート観測をしています。キャンベラにあるオーストラリア国立大学に留学していますが、受け入れ教官が移動していなかったらATNFに留学に来る予定でした。オーストラリア国立大学ではポスドクとPh.D学生の多さにびっくりしましたがATNFは国立の研究所というだけあってさらに研究者の数が多いです。青いゲートから入って右手に研究所、左手に宿泊施設があり、広場に出ると存在感抜群のアンテナが2つあります。
広場のアンテナ

 アンテナ好きの私は来てすぐにテンションがかなりアップしました。ちなみにこのアンテナは受信機のテストのために建設されたそうですが、人口電波だらけのシドニーにあるため使い物にならなかったとの噂を耳にしました。テレビの電波も携帯電話の電波も電子レンジからの電波もビュンビュン飛んでるはずなので宇宙からの弱い電波がかき消されてしまいます。

観測!!!

 今回使用した望遠鏡はシドニーから565km離れたナラブライにあるAustralia Telescope Compact Array (ATCA、オーストラリアコンパクト電波干渉計)です。シドニーからナラブライまでは車または電車で8時間程度かかります。口径22mのアンテナ6台で較正されている干渉計型望遠鏡です。アンテナの周りに柵はなく、そこらじゅうにカンガルーが草を食べに来たりしているそうです。理想的にはナラブライに出向いて観測するのが良いのですが遠いんですよね・・・。
 電波望遠鏡は光赤外望遠鏡とは違い、夜でもなくても観測できますが観測天体が空に上がっている時間帯の関係で夕方6時半から朝の6時半までの12時間の観測を5日間しました。

〜1日はこんな感じ〜
18:00 望遠鏡セットアップ開始
18:30 キャリブレータ(較正用天体)の観測開始
19:00 観測ターゲットの観測開始・定期的にスペクトルをチェックする
20:30 ポスドクさんがご飯を食べに行く
21:30 ポスドクさんが帰ってくる。入れ替わりでご飯を食べに行く
06:00 観測ターゲットの観測を終了、キャリブレータの観測開始
06:30 キャリブレータの観測終了、次の観測者に引き渡し
07:00 就寝
14:00 起床
15:00 朝ごはん
15:30 研究棟へ。観測までに昨日の復習やメールチェック
17:30 ふらーっとコントロールルームへ移動

 観測ターゲットの観測を開始してからは11時間ほど自動的に望遠鏡が観測を続けてくれるのであまりすることはありません。定期的にスペクトルやエラーのチェックをするのですが、時々コリレータのブロックが落ちるというトラブルに遭遇しました。2バンドで同じデータを同時に記録しているので片方のブロックが落ちるのはいいのですが両方のバンドでブロックが落ちたときは観測を中断してブロックの復旧作業を行いました。

コントロールルーム

 観測は研究棟の中にあるコントロールルームから行います。コントロールルームにはParkes 64m電波望遠鏡、ATCA、ASKAP、Mopra電波望遠鏡を観測できるようになっており、それぞれモニターが3台かそれ以上と電話機が置いてあります。モニターは観測をコントロールするスクリーンやスペクトルをモニタリングするため、全て使用します。共有スペースのテーブルには観測者用にチョコレートやクッキーが常備されているので嬉しかったですね。
 研究棟にはコントロールルームの他にはレクチャー・シアターや各研究者の研究室、会議室などがありますが研究室の数がとにかく多いので誰がどこにいるのかほとんどわかりませんでしたが、会えた人たちはとてもフレンドリーでいい人たちばかりでした。
ATCA観測ブース

ロッジ

 ここにはParkes 64m電波望遠鏡、ATCA、ASKAP、Mopra電波望遠鏡のリモート観測施設があるため、よく観測者が訪れます。観測者は宿泊施設であるロッジに泊まる方がかなり多いです。昼間に観測を行う人もいますが私たちのように夜の間に観測する人や早朝に観測を始める人もいるので観測者が寝ている時間帯はまちまちです。そんな観測者の部屋には寝ている間にドアの外側に貼っておくことができるこんなボードがあります。夜通し観測している私たちにはとても嬉しい配慮です。ロッジには宿泊施設の他に共用スペースとしてキッチンとリビングがあります。冷蔵庫や棚の中には朝ごはん用のトーストやシリアル、バター、ジャムなどの他に牛乳、ジュース、調味料などが置いてあり、自由に食べることができます。もちろん3食パンやシリアルを食べるのはちょっときついので自分が買ってきたものも冷蔵庫の中に入れることができます。自転車もレンタルできるので時間があるときは周りの町並みを探検することができますね。

オーストラリア版国立天文台にきてしかも観測ができるというのはなかなか巡り会えないチャンスです。望遠鏡の仕組み、観測手法や解析手法に関してとても勉強になりました。今回の観測に参加する話をくださった先生やサポートしてくれた方々に感謝です。

この記事を書いた人

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Chey Saita
現在地:日本
ベルギーで幼稚園時代2年半、マレーシアで小学・中学時代4年間過ごす マレーシアでは英国系インターナショナル・スクールに通う 帰国後は兵庫県立芦屋国際中等教育学校に編入。3期生。 鹿児島大学理学部物理科学科宇宙コース->鹿児島大学大学院理工学研究科物理・宇宙専攻 第2回サイエンス・インカレ ファイナリスト IAC2014(宇宙国際会議)のJAXA学生派遣プログラムの代表生 トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム 1期生 オーストラリア国立大学にて電波天文学を研究するために留学

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