Canpath
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ダブリンマラソン

人道支援を行う団体は、大抵数か月に一度赴任地から国外に出る「健康管理休暇」なるものがあり、それを使って僕はパレスチナの外に出ることができた。とにかく遠く離れたところまで行きたくて、行先はアイルランドに決定した。ダブリンは綺麗で、紛争を忘れさせてくれる。

ダブリン市街を一人散歩する。今日はマラソンが開かれていると聞いていたけど、ダブリン一の大通り、オコンネル通りを歩いてもそんな気配はない。港に続く運河を越えて、トリニティ大学沿いに走る通りに来た時ようやくランナーたちを発見した。そこから僕は貸自転車に乗ってマラソンコースと並行して走ることにした。
すごい人だ!何千人いるだろうか。紅葉で彩られた街中を駆け抜けるランナーたちは、日中ながら斜陽のような日が差す青天の下、街中からの声援を受けている。
「がんばれ、あともう少しだぞ!」
「その調子だ!行け、行け!」
「もうひと踏ん張り!」
「俺らがついてるぞ!」
「大丈夫、ゴールまで行けるって!」
そうだよな・・・そうだったよな・・・人間ってこういうもんだったよな・・・がんばってる人がいたら、それが誰であろうと応援したくなるもんだったよな・・・。
何か忘れかけていたものを取り戻したように、僕も全く見知らぬランナーたちに声援を送った。
ゴール地点の近くでは、ドラマが繰り広げられていた。声援を送る娘を発見し、手をつないでゴールする父親。リタイヤした仲間の一人を車いすに乗せて全員で押し続けるグループ参加のランナーたち。100メートル手前で足が痙攣を起こし、救助隊員に支えられながらもゴールを睨みつけて走りだそうとする男性。あるランナーは歓喜の声を上げ、あるランナーは疲れ果てた表情でゴールを見やり、あるランナーは観客にガッツポーズを見せた。こんな光景がエルサレムでみられたらどんなにいいだろうか。

この記事を書いた人

一風
現在地:イギリス
オランダの大学院を出て人道支援を始める。現在国際機関に勤務。

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